『海ちゃん、おはよう』
焚き火しながら酒ばっかり飲んで酔っ払っている
気のいいおとっつぁん…。
というのが椎名誠さんに対するイメージなのですが、
こと私小説については、案外「ふつうのオトーサン」なんだなぁ。
と、ますます椎名ファンになってしまう、本書です。
息子さんである岳くんの幼少期~少年期を描いた『岳物語』から
早十数年。
いままであまり小説には登場することの無かった娘さん葉(よう)さん
の乳児期をモデルにした小説です。
そういえば、ずっと前に何かで「岳物語を書いているときに、娘からは
『私のことは書かないでねっ!』と言われた」と椎名さんが語っている
のを読んだことがありますが…。
初めての子育てというのは母親にとっても父親にとっても「初めて」で
おっかなびっくり、と同時に、ドキドキワクワクを感じる日々の連続
でもあります。
ここでどう自分なりに子供に関わろうとするか…。
素のままでオオッ!・フフフ。・ヤヤヤ!・ムムム…の気持ちが
一冊にぎっしり詰まっていて、特別に事件は無いのですが
椎名オトーサンの言動ぶりに、何となく心が和らぎます。
ウチのだんなも「彼なりに」こんなふうに思うことがあったの
かもしれないなぁ。と、思ったりもしました。
(でも、『協力する』という意識が欠如しているウチの夫…。)
働く母ちゃんをやっている(やっていなくても)と、
あまりの夫の非協力ぶりに「キーッ!!!」を気持ちがささくれ
立ってくることがありますが、そんな時に効く一冊でもあります。
まぁ、こっちだけ気持ちがいっぱいいっぱいになっても何だし、
一人で全部できるわけないんだから、できるとこから
のんびり行こうよ。…っていう気持ちになる本です。
『海ちゃん、おはよう』
椎名 誠著 朝日文庫 ¥560-
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